本研究は、個人化と評価・競争に特徴付けられる教職の<システムの機能化>の実態を踏まえ、それを教師自身がどのように意味づけしているかを探ることにある。またこの考察を通じて、最終的には、これまでの「日本型学校システム」の教師が、今後どのような教職像に変容するのかを検討することを目的としている。 現在進行している教育改革を「システムの機能化」という概念で把握し、本年度は、まずその実態を明らかにすることに努めた。本年度は、1)都道府県対象の教員政策に関する調査をもとに、複数の県での、システムの機能化に関する実態の聞き取り、2)学校組織の業務の合理化を追求している群馬県をフィールドとして、その改革の実態の聞き取りを実施した。 聴き取り調査の結果、第一に、制度上の改革は、まだ教師の日常の実践レベルにまで浸透しているわけではないこと、第二に、組織上の改革(群馬県における「業務の合理化」の改革)は<システムの機能化>を体現するものではあるが、教員の個人化と評価・競争という観点とは一線を画していることが明らかになった。 このことは、<システムの機能化>という問題が、制度と組織とで有する意味が異なるということを意味していると考えられ、その点では新たな知見であると解釈できる。 しかしながら、いずれも本研究の本来的な研究目的を遂行するには、問題があることも明らかになった。また、今後どちらのレベルの<システム>に重点を置くかという点で、すなわち、教職全体(制度)を対象にするのか、組織を対象にするのかという点で、研究の方向性も大きく異なることが予測された。次年度は、このズレについて早急に検討するとともに、いずれかに焦点を絞り、そうした変容が教員自身にどのように意味づけられているのかを明らかにすることを目指す予定である。
|