研究課題
基盤研究(C)
本研究は、教育改革・教員政策=システムの機能化を、教員自らがどのように受け止めているかという問題を実証的に明らかにすることを目的としている。具体的には、教員評価や表彰制度は、教員の「やる気」にどのように作用するのか、また、仕事と責任の範囲の明確化や、学校組織の分化・多様な職員の配置が、教員の仕事や職業的成長のあり方をどのように変えるのかといった問題を分析した。このように教師の主観的な認識を明らかにすることは、1)それが教育政策の成否に大きく影響を及ぼすこと、2)グローバルな規模で展開する教育改革に対する、教師の対応の、共通性と異質性に対する資料を提供すること、さらには3)教職の専門職化の方向性を考えること、というような点で意義がある。本年は、前年度のインタビュー調査や資料を踏まえ、アンケート調査を実施した。その結果、わが国の教師の多くは、教育改革・教員政策について、それを否定的に捉えていないということが明らかになった。教員表彰や教員評価について、さらには、学校組織の変化や多様な職員の配置についても肯定的な意見が多く見られた。こうした知見は、教育改革が教職への嫌気を顕在化させている英国の状況と比べると対照的である。本研究ではわが国におけるこうした知見に対して、英国と比較しながら検討し考察を加えた。わが国の教師は、外側からの要求を「自分の役割」として無前提に引き受けてしまう傾向があり、このことが、政策や社会を批判するのではなく、自分を鞭打つことにつながっているのではないかと解釈された。「献身的教師像」と呼ばれる教師の姿が、既に以前から指摘されているが、こうしたわが国の教師の特質が、イギリス等に見られる教師の反応とは異なった結果を導いていると考えられる。
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早稲田大学教職研究科紀要 創刊号(印刷中)
教育展望 54巻第7号
ページ: 24-30
Kyoiku-tenbo vo1. 54 No. 7
Bullitin of Graduate School of Teacher Education of Waseda University, the first issue (now printing)