本研究課題は、我が国高等教育の財政・財務システム研究の一環として、国立大学(国立大学法人)と私立大学(学校法人)の財務比較分析を行うものである。 この目的のため、19年度は、昨年度に収集した国立大学および私立大学の財務データの補完を行った。具体的には、国立大学については、「国立大学法人会計基準」に基づいて、収集したデータを吟味した。すなわち「基準」からみて整合的ではないデータについては他の資料等を参照しつつ、修正作業を実施した。私立大学については、これまでに収集したデータが学校法人全体のものであることが多かったので、所属機関の財務部等の協力を得て、大学部門(法人部門、附属病院部門、附属学校部門等を除いたもの)のデータ収集を実施した。 同時に、収集したデータを、国立大学と私立大学に共通する枠組で捉えるための理論研究を行った。具体的には、国内外の大学財務研究および会計基準研究を参考にして理論研究を深めつつ、収集したデータを次のような方法で捉え直すことを検討した。 1.国立大学データを学校法人会計基準により組み替える. 2.私立大学データを国立大学法人会計基準により組み替える。 3.国立大学および私立大学データを企業会計方式により組み替える。 4.国立大学および私立大学データをFASB(米国財務会計基準審議会)財務会計基準第93号などの非営利法人に適用される会計基準により組み替える。 なお、19年度は、研究期間の2年目であったので、これまでの研究成果の一部を「拡大期以降の私大財務」として、日中高等教育フォーラム(新彊師範大学、2007年8月3日)において報告し、今後の研究方向について参加者より有益な助言を得た。
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