メキシコ革命の中で、1920年代から30年代において国民教育が形成された。この過程で、公教育におけるジェンダー化、つまり都市の実業教育として「家庭学校」が設立され、そのカリキュラムにおいてジェンダー規範や役割が明示化され、同時に階層によるジェンダー役割の分化が実現していった。当時、国民教育の基盤である初等教育や職業教育、師範学校などの中等教育は、メキシコシティや地方の都市を中心としていた。一方、農村への学校教育の普及は、遅々として進まなかったが、農村への文化伝道団などの形で、教育省を中心として様々な農村教育の施策が取られた。 教育官僚であり、またフェミニストであるエレナ・トレスは、学校給食や農村への文化伝道団の組織化、農村教育の内容、農村教師向け教材の開発やラジオ番組の政策など、公教育の普及に大きな足跡を残した。エレナ・トレスが、農村教育を通じて、当時の女子教育についてどのように考え、公教育においてジェンダー役割をいかに位置づけていたかを、明らかにするために、2007年9月1日から12日までメキシコに出張し、イベロアメリカ大学古文書館において、資料収集を行った。また、メキシコ革命期におけるジェンダー規範をめぐる言説を明らかにするために、1921年の保守派と社会主義フェミニストとの間での「母の日」と出産管理をめぐる論争について論文をまとめ、発表した。
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