二年度目の計画に沿って、インド連邦政府が全力を傾けて実現しようとしている初等教育普遍化のための政策のひとつとして各州下の各県に設置した県教育研究所での初等教員養成について、本研究が焦点を置くインドマハラシュトラ州の政策状況・進展を分析するための資料収集を継続した。また、研究代表者が構築してきたインドの当該分野研究者との討議を進め、最終年度の研究活動のための研究環境の整備を行った。この過程で明らかになった諸点を要約すると、以下のようになる。 地域に根ざした初等教員養成は各州・各県の実状に合うように、連邦政府の指針を参考に各州が編纂する初等教員養成カリキュラムに基づいて実施されている。また、州自治を尊重するインドであるが、教員養成に国として統一性を持たせるために連邦政府は全国教員養成協議会を設置して初等教員養成の質的充実を図っている。 マハラシュトラ州はインドの総面積の9%を持ち、35の県がある、ムンバイのような商業都市を持つが、州人口の識字率はインド平均の65%よりも高いものの76%である。各県の初等教育状況の正確な把握と適切な方策の実施によって初等教育普遍化の早期実現が必要な州であるといえる。代表研究者は、同州オスマナバード県の初等教育普及状況と初等教員養成の実状解明が質的充実を伴った初等教育普遍化貢献すると考えており、1990年代にインドで部分的ではあるが海外援助も導入して展開された初等教育普及運動によって初等学校の基本的な設備が充実された同県についての検討をさらに継続する。 二年度目の研究活動の成果として東海大学福岡短期大学紀要9号に拙論、"Elementary Edeucation and Elementary Teacher Education in India after Independence"の掲載を許可されたほか、2点の執筆活動を行うことができた。
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