本研究は、2003年度の専門職大学院の発足、同年の構造改革特区域法にもとづく学校設置会社による大学設置の認可、この2つの新制度にもとついて設立された専門学校を経営する学校法人が設置する学部をもたない大学院大学と、営利を目的とする株式会社が経営する大学・大学院が、どのような社会的機能をもつかを、伝統的な大学が設立したそれと比較して実証的に明らかにすることを目的とする。 具体的には、学生の入学時における諸属性と卒業後の進路との関係、学生が当該機関で学習した経験に関する意識、専門職大学院におけるカリキュラム、教育内容、教授法、教員の属性などを、諸文献情報の分析に加えて、教材の分析、授業の観察、学生や教員に対するヒアリングやアンケートによって得たデータを分析することで明らかにする。 こうした作業を通じて、わが国の高等教育において、伝統的な学問の場とされてきた大学において、必ずしも学問的背景をもたない実践知を教える場が成立する可能性を考察する。 本年度は、4月〜10月に、この研究テーマに関して研究蓄積の多い、アメリカの高等教育を中心とする諸研究をとりまとめ、論点を整理し、わが国の問題を考えるための分析枠組みの構築の準備を行った。 また、11月より、訪問調査、ヒアリング対象機関を選定して、専門職大学院設立の経緯、大学をもたないなかで大学院を設立することによって生じる困難、学生の教育における状況などに関して、2校を訪問し、その結果を、訪問記録として、リクルート社のカレッジ・マネジメントに掲載した。ヒアリングの結果、明らかになったこととして、専門学校の基盤をベースとして大学院に参入するときに、大学院の経営陣に大学関係者が少ないために、大学における学問をベースにしたカリキュラム編成、授業の方法などを他者から学習する必要があること、専門学校の訓練的な教育内容に、マネジメント的な内容を付加することで大学院として種別化を図ろうとしていることなどが明らかになった。
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