本研究は、2003年度より発足した専門職大学院が提供している教育と、その教育を享受している利用者(=学生)の両面から、日本の専門職大学院の社会的機能を検討しようとするものである。教育を分析する視点は、そのカリキュラムや教育方法が、知識の定型性と職業遂行との関係性の2つの軸で構成される象限のどこに位置つくか、それが既存の学術大学院や専門学校と比較してどのような関係にあるかを明らかにすることにあり、学生を分析する視点は、専門職への見通しの度合いと学生文化の醸成の度合いとで構成される象限のどこに位置つくか、それが既存の学術大学院や専門学校の学生と比較してどのような関係にあるかを明らかにすることにある。 本年度は、昨年度より継続していくつかの専門職大学院の訪問し、教員へのインタビューを通じて、教育理念や実態を調査するとともに、全専門職大学院の在学生を対象としたアンケート調査を実施した。国家試験による資格取得を目的とする会計専門職大学院は、合格者数と専門職大学院在学者数とのアンバランスの問題はよく指摘されるが、それ以外に国家試験制度と合格に必要な平均教育年数と専門職大学院の教育年数との齟齬という問題があり、そのため国家試験の受験勉強をすでに行っている学生を入学させていることが明らかになった。また、MOTの場合は、特定の資格がないこと、MBAとの差異化が充分にできないために、専門職大学院としての独自性をだすことが困難な状況にあった。 こうしたなか、学生の40%は30歳代で就労経験をもっている。したがって、就業経験が学習へのドライブにはなっているが、専門職への見通しが必ずしもあるわけではないようだ。アンケート調査の分析は、これからであるが・学生の職業的な見通しと学生文化との関係、それらと専門職大学院に在学している学生の背景と関係などを分析していく予定である。
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