明治および大正期の中等学校(高等中学校のちの高等学校、高等師範学校、専門学校)の入学試験問題における古典(漢文を除く)領域の出題テキストと設問内容の調査とそれに基づく考察を行った。この時期の出題テキストの主要なものは徒然草と玉勝間である。学校の教科書テキストの掲載頻度と出題テキストの出題頻度を比較すると、近世と中世が中心であることは同様であるが、作品別においては徒然草を除いて異なる傾向を有する。設問内容は当初から口語への文体変換中心であり、その後に大きな変化はない。出題テキストの集中と設問の単一性が、口語訳の記憶中心といった古典学習を生じさせ、後に影響を与えることになったと考えられる。
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