研究最終年度(3年目)では、研究2年目と同様に「特別支援学校(肢体不自由・知的障害)」への教材提供とそのモニターを継続して実施した。繰り返し様々な大きさや形態の教材を提供して調査したところ、肢体不自由生徒の場合には、最低でも30mm×30mm程度の大きさの部品でなければ「つまむ」ことができず、部品の厚さも柔らかいコルク材のようなものの場合には、5mm程度は必要であることが判明した。部材の強度が大きい素材の場合には、3mm程度まで薄くすることは可能であるが、それ以下だと「つまむ」ことが困難であることも判明した。平田新次郎・金田弘(1987)「人工木目の利用による木材加工の題材開発」にヒントを得て開発した筆者らの教材に対する生徒の取り組みでは、「興味を持って積極的に作業学習に取り組む姿勢が観察された」との特別支援学校教諭からの評価が得られ、作業技能指導訓練を受けていない教諭による指導でも、一定水準の完成度を保つことが可能であった。特に、有機溶剤や高価な塗料を使用しない「白木ワックス」による仕上げ方法は生徒及び指導教諭から高評価が得られた。また、「作業学習」のための「素過程」の抽出を技術科教科書2社を対象として行い、「接合」「接着」「取りつけ」「組み立て」「塗装」「研磨」などが「作業学習での最低条件」として抽出された。青山は、全国の特別支援学校教諭を対象として実施したアンケート調査結果を分析し、その概要についてとりまとめ、職業教育における作業学習の位置づけ、作業種の配慮と勤労先、作業学習の内容と勤労先との一致、作業学習の教材と障害特性、職業教育を進める上での優先課題と困難な課題についてまとめた。(平成21年7月に発表予定である。) 視覚障害者のための技術・家庭科教材の開発は難航し、具体的な教材提案にまでは至らなかったが、健常者用の墨字教科書内容の点字教科書への点字化率、次期中学校学習指導要領技術・家庭科内容の視覚障害者への指導可能性に関する難易度評定を行った。(平成21年8月に発表予定である。)
|