本年は、これまで収集した資料や事例を整理し、小学校英語に関する理論的枠組みを提示した。このことにより、従来感覚的に進めざるを得なかった小学校英語活動の実践活動に、今後は理論的な裏付けも加えることが可能となったことに大きな意義があると考える。この理論的枠組みは、従来の日本の英語教育からの大きな方向転換(英語教育における内容と構造の転換、及び教員が果たす役割の転換)を4つの具体的方策((1)学習者に十分な音声インプットを与えること、(2)学習者が実際に言語を使用する機会を増やすこと、(3)学習者にとって言語使用が自然に起こる場面を設定すること、(4)教員志望の学生に英語活動に関する実践的な研修の機会を提供すること)によって実現することを目指すものである。(1)から(3)の内容を模擬授業形式で実施したものが研究代表者の勤務校における「英語学演習C」であり、実際に公立小学校で授業実践したものが「英語活動出張授業」である。「英語活動出張授業」では県内の公立小学校において1〜6年生の全学年で授業を実施したが、学生たちにとっては児童の発達段階による活動や指導法の工夫について直接体験を通して理解を深め、技術を高める貴重な機会になったと思われる。「英語学演習C」に加えて、「コミュニケーション教育実践体験演習」(1年次)、「英語コミュニケーション教材実践研究演習」(2・3年次)も順次開講しており、理論と実践の双方を有機的に統合させる試みは継続している。このように、本研究においてはこれまで実践が先行しがちであった小学校英語活動について、実践活動の基盤となる理論的な枠組みを提示すると同時に、高い実践力をもち、即戦力となるような次世代の小学校教員を養成するための、ひとつのモデルを示すことができたと考える。
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