本研究の初年度、研修プログラム作成の基盤づくりとして、1)日本における生徒指導、教育相談、養護教諭、特別支援教育コーディネーターなどの担当者に対する調査研究、2)先進国カナダ・トロント市教育委員会への実態調査、3)国内実態調査(横浜、大阪、兵庫、滋賀、東京など)への聞き取り調査、4)児童虐待防止をめぐる相談援助技術論について文献研究を行った。 1つめの調査研究では、学校の地域関係機関連携やスクールサポートネットワーク、校内委員会などの実態と課題より、日本におけるソーシャルワークの必要性について検討した(研究成果:「チーム・コーディネートの世界と学校文化」、「人と人とをつなぐ人的・制度的資源の創出を」参照)。2つめの海外調査では、トロント市教育委員会のスクールソーシャルワーク部門やオンタリオソーシャルワーカー協会の協力を得て、学校におけるソーシャルワーク実践での専門性の解明、そして現職者指導の調査・研究協議をおこなった(研究成果:「学校ソーシャルワークと教育機会の保障」「学校ソーシャルワークからみた特別なニーズ教育」参照)。3つめの国内の先行実践の現地調査では、都府県教育委員会担当者、スクールソーシャルワーカー、学校(担当教諭・校長)らとの研究協議をおこない、校内体制やチーム会議のあり方、見立て・アセスメント技法などについて調査した。4つめの専門技術の検討において、児童虐待への学校における対応を中心に、児童相談所や家庭裁判所などの業務との関わりから、方法技術の今日的課題を明らかにした(研究成果:「専門的実践領域としての学校ソーシャルワーク」参照)。こうした研究から得られた知見については、福島大学教育実践研修講座(現職教員対象)や教育委員会主催の教員研修・講演、大学院での養護教諭との研修プログラム開発などでフィードバックしつつ深化をはかった。
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