研究概要 |
注意欠陥/多動性障害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder.以下,ADHD)のある子どものなかには、漢字の書字行動の獲得過程において、単調な繰り返しによる練習を拒否する場合がある。本研究はこのようなADHDのある子どもに対し個別式の「e-支援」を利用した教材や指導法を開発し、書字行動の獲得を阻害する要因の行動的翻訳の効果を明らかにすることを企図し進めてきた。今年度は、従来開発してきた漢字や英単語のスペリングの書字指導、読字指導のためのソフトウエアを、個別式「e-支援」システムで稼働させられるようさらに改良を重ね、Web上で公開した。 個別式「e-支援」を実施するためには、対象となる児童生徒の書字行動の獲得状況やつまずきの原因を個人ごとに明らかにする必要がある。また、ADHDの子ども達を取り巻く重要な環境要因として、日々教室で接している教師の考え方を明らかにすることも重要である。そこで平成21年度は、教員を対象とした書字指導に対する意識調査、ADHDと診断された子どもやその傾向の高い子どもの漢字の書字にみられる傾向の分析、及びこれまで実施してきた教育相談の継続を行い協力者となってもらうための実態調査を進めてきた。これらの調査及び教育相談は、研究の実施計画に基づき充分に主旨を説明することにより参加者や家族の理解と同意を得るとともに、個人の情報やプライバシーが流失しないよう、資料の保存・管理はもちろん、調査及び実験に協力者として参加した大学院生等にも事前指導と事後指導を十分に行って取り組んだ。
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