[研究の目的]本研究は保健室登校児(以下対象児)に対し療法的音楽教育を施しながらその児童を取り巻く人間関係にも注視し、音楽科としての問題解決の糸口を探ろうとしたものである。具体的には以下の点を明らかにしようとした。 1.音楽教育の立場から、学校教育の中で療法的音楽教育はどのような形で係わることが可能か。2.学校教育の中で、心身症児童に対して教育実習生は教師とどのような連携をとるべきか。3.言語的コミュニケーションが図れなくなった友人関係等に関して音楽的コミュニケーションは肯定的な対人関係を得るきっかけになりうるか。4.啓蒙活動をいかにおこなうべきか [研究方法]主に次の施設において調査研究を実施した。1.山梨県甲州市立松皇中学校(パソコンによる作品交換)2.山梨県立巨摩高等学校(パソコンによる作品交換)3.山梨不登校の子どもを持つ親たちの会(対象児及びその保護者との直接的な関わり)4.川崎医療福祉大(睡眠障害のある心身障害児に関する調査) [研究結果]1.直接的な関わりを持ちたがらない対象児に対し、パソコンを通じて創作活動を共有することは対象児とのコミュニケーションを成立させる上で有効な手段であった。2.直接関わりを持てる対象児とコミュニケーションを図る方法として初期段階ではスクウィグル技法、連句療法が有効な手段であった。3.教員養成系大学では音楽科学生に対し、療育関連科目の指導が必要であることを再認識した。4.対象児との関係性が成立していなくても、信頼できる教師を媒介としての創作活動は対象児及び教師にとって有益なものであった。5.睡眠障害に関する調査結果は閉鎖性の強い地域住民にとっても理解・支持されやすいものであった。 [今後の課題]対象児を取り巻く大人に対する啓蒙活動が必要。また、多岐にわたる芸術療法的な研究と実践の必要性。
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