研究課題
基盤研究(C)
高等教育における「ワークショップ」教授法の源流であるクリエイティブライティングのワークショップ事例として、テキサスA&M大学のDr.テイラーによる授業を、参加観察と教育批評、非構造化インタビューの分析により研究し、中等教育にも応用可能な授業構成法をワークショップモデルとして抽出した。第一に、授業における生徒相互の会話を通しての関係性の構築の方法が具体的に示された。また、指導者の役割が一般的なファシリテータと言われるものを越えて、高度な専門知識を効果的に用いる様相が明らかになった。第二に関係性の構築ゆえに創出される新たなアイデアがあること、教師から成績を評定される近代学校の枠組みの内にあってそれを無化する「美的欲求」が生まれるという点が、授業の成功のメルクマールとなることが明らかになった。またこの事例に顕著な特徴として、関係性を構築する際の重要な要素として沈黙と会話が結びつけられることが見いだされ、教育の成果として芸術表現についての認識の変化が帰結することも示された。またワークショップを中心的な手法とする「美的教育」を実施するリンカーンセンターインスティテュートにおいて大学教育のためのワークショップを参加観察し、社会構成主義の知識観に基づくグリーンの美的教育論とワークショップモデルの親和性を明らかにした。次に「ワークショップモデル」を、いかにして中等教育における芸術科の授業に適応することができるか、未経験の授業者にこのモデルを伝えるために何が重要かをアクションリサーチを通して検討した。授業の成否にかかわる条件として、物理的な場の構成、素材となる音楽内容の特性が取り出された。またこのモデルが有効に実施された場合に、表現教育を主題とした授業においてどのような成果が見られるかを、教育批評の手法で明らかにした。授業様式を転換するに至った授業者の内的経験が非構造化インタビューの分析を通して捉えられ、他の授業への転移など、多様性を学びの資源とするワークショップモデルの有効性が捉えられた。
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三重大学教育学部研究紀要 59
ページ: 207-215
Proceedings of Sixth Hawaii International Conference on Arts and Humanities, 2008 (CD-R) 6
Bulletin of Research of Mie University, Department of Education Vol.59
Proceedings : Hawaii International Conference on Arts and Humanities 6th Annual meetingc (CD-R)