研究概要 |
"音楽的経験"の中でも「音楽的対話(やりとり)に着目し,その構造をミクロ的に分析する方法を開発した。 その方法として,椎塚久雄らの人工感性(機械知能)と自然知能(自然能力)の縦軸と,表現と学習の横軸からなる4つの象限により知能システムに,「暗黙的-形式的」という軸を加えたフレームワークを考案した。そして「音楽的対話」のプロセスで,対象者が暗黙知からどのようなプロセスをたどりながら形式知に変換するのか,フレームの象限として示し,様々な発達段階における"感性"や"臨床知"を可視化することを試みた。 現段階までで,「音楽的対話」を「感性システム」として捉えるツールを開発することができた。我が国においては,感性を科学として捉えようとする試みが1990年代後半からさかんになっている。様々な感性の定義のうち,本研究では,桑子敏雄(2002)の「環境と身体的自己との相関関係を感知する能力」という感性の定義に依拠している。桑子氏や先行研究とした原田昭氏や椎塚久雄氏の主宰する日本感性工学会においても研究経過を報告し,学術的なフィードバッグを受けている。 また,蓄積されているコンテンツ(開発した教材・活動・横断的な事例)をマクロ的に分類し,芸術プログラムそのものの変容を明らかにした。これは,今後,カリキュラム開発の基盤となりうる。
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