我が国では、1990年代後半から、感性を科学として捉えようとする試みがさかんになっている。本研究は、様々な定義のうち、「環境と身体的自己との相関関係を感知する能力(桑子、2002)」に依拠し、「音楽的対話」に着目し、その構造を分析する方法を開発した。 まず、「人工感性と自然知能」の縦軸と、「表現と学習」の横軸からなる4つの象限からなる知能システム(椎塚、2004)に、「暗黙的=形式的」という軸を加えたフレームワークを考案した。そして、対象者が暗黙知からどのようなプロセスをたどりながら形式知に変換するのかを、フレームの象限として示し、様々な発達段階における"感性"や"臨床知"を可視化した。 このフレームワークに関しては、日本感性工学会においても研究経過を報告し、学術的なフィードバックを受けている。 また、継続的に研究しているWilliams Syndromeの芸術プログラムに関しては、米国とアイルランドとの比較し、6年にわたるプログラムの表層構造と深層構造を報告した。2008年3月には、アメリカのウィリアムズ症候群協会のエグゼクティヴディレクターのテリーモンケーバ氏と息子のベン氏を招聘し、日本の患児と家族、研究者、関係者によるシンポジウムを開催した。同時に、ワークショップを開催し、音楽に対する感受性に関して検討した。特に、様々な音楽的な場において、実践者がどのような「知」を働かせているのかを明らかにした。
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