授業スタイルの形成について、学校文化がどのように影響しているのか、個々の教師たちが学校における「教え」と「学び」の文化との出会いによってどのように授業スタイルを構築(再構築)していったのか、授業観察、インタビューを用いて明らかにすることが今年度の研究目的であった。 奈良女子大学附属小学校においては、12人の教師にインタビューを行い、学校文化が確かに個々の教師に授業スタイルの再構築を促していることが確認された。奈良女子大学附属小学校においては、大正時代から綿々と受け継がれた学習法が、子どもたちの「おたずね」「お伝え」また独自・相互・独自学習として伝承されている。各々の教師のこの学習法との出会いは、カルチャーショックのような出会い、あるいは自分のこれまで行ってきたことの延長線上に位置付いた出会い、など多様だが、いずれにしろ、教師自身がこの学校においける自分の授業スタイルをつくりあげていく契機になる、という意味で大きなエポックメイキングとなっている。今年度転任してきた教師にも5月にインタビューを行い、これ以降定点的にインタビューをさらに行いながらその変化を追っていく予定である。 堀川小学校においては、まだ十分個々の教師のインタビューをとれていない状況だが、重松鷹泰主事の大きな影響を受けて学校文化を成立させたという点においては、奈良女子大学附属小学校と共通点を持ちつつも、学校の伝統を引き継ぐ研修のシステムはずいぶんと異なっている。それは附属と公立という大きな枠組みの違いもあるが、きわめて周到なシステムを構築している。奈良の場合は一人一人の教師の「学び」に基本的には委ねられるのに対して、堀川においては、転任してきた教師は、年間20回に及ぶ学級公開授業、研究授業の中で、さまざまな指導やコメントを受けながら授業スタイルを構築していくのである。堀川の場合も基本的な共通理念を持ちながら、個々の教師の味を活かして授業スタイルが構築されていく。次年度は何人かの教師のライフヒストリーインタビューを行いながら個々の教師がその経験をどのように意味づけているのか明らかにしていく予定である。
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