研究成果についてはおよそ三つのパートに分けることができる。 一つ目は、授業研究としてのライフヒストリー的なアプローチの確立である。授業研究の方法論としては、従来一時間単位、あるいは長くても単元単位の授業分析が主であったが、通授業的な授業者の授業スタイルは、短い単位の授業研究では必ずしも明らかにはされてこなかった。授業スタイルの形成と変容を明らかにするためにライフヒストリー的アプローチの有効性を一定明らかにすることができた。 二つ目は、奈良女子大学附属小学校における授業研究、およびライフヒストリーインタビューのさらなる展開である。小幡肇との協働はアクションリサーチとして行われた。また新しく転任してきた教師へのインタビューを行い、授業スタイルの形成にとって学校文化がかなり大きな役割をはたしていることが明らかになった。 三つ目は、いくつかの周辺的なモノグラフづくりである。公立の学校のみでなく、日本語学校において教師がどのように授業スタイルを形成しているか、上と同じ方法論で分析、解釈を行い、また学校文化だけではなく、サークル等を含めた教師文化が授業スタイルの形成にいかにかかわっているか、河崎かよ子氏を対象にしてライフヒストリーインタビューを行い、授業づくりから授業観のレベルを含めて授業スタイルの形成に教師文化がどのようにかかわっているかを明らかにすることができた。
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