本研究は、中学校美術科のデザイン領域において、協同的思考と問題解決を軸にして題材を設定し、実践を行うことでその有効性を検証したものである。 初年度は、教材開発の基盤となるデザイン理論や学習における協同的思考や問題解決、そしてデザインの作品鑑賞の観点から調査研究を行った。さらに、研究協力者とともにデザイン学習研究会を開催し、実践に向けた教材開発を行った。 二年目は、協同的思考と問題解決を軸にして指導案を作成し、4校の中学校で検証授業を行うと共に、生徒に対してデザインに関する項目で意識調査を行った。実践題材名は「ティッシュBOXのリ・デザイン」「プロダクトデザイン・プロジェクト三方よし」「粟中発!夢のデザイナーになろう」「人や環境にやさしいプロダクトデザイン」などである。その結果、いずれの授業においても、共同で問題解決する楽しさを味わった生徒が多い反面、最初の問題発見の段階において学習の困難性が高いことがわかった。意識調査は「デザイン・イメージ」、「商品購入の条件」、「共同思考や問題解決への興味・関心」、「デザイン鑑賞への興味・関心」、「デザイン題材への興味・関心」の観点で行った。その結果、特に「協同的思考による学習」は男女とも必要性が高く、楽しいと答えている。一方、「鑑賞や題材への興味関心」の項目では、男女差が明確にあり、男子は「映像メディア関係」、女子は「アクセサリーやファッション」への興味関心が高い。生徒の興味関心を喚起しながら、鑑賞を中心としたデザイン学習の実践が今後の課題である。そして、本研究に関連したデザインの歴史研究として、昭和30年代の普通教育におけるデザイン教育の動向や教師も間所春に焦点をあてた研究を行った。
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