1940年代後半から1960年前後までの音楽科教育実践の実像について、第一には政策理念との関係構造の把握、第二には附属小学校、公立小学校等の資料等により、教科統合から分化・固定の過程での音楽科の組織化の類型化とその特質の解明を主たる目的とし、以下の課題を設定した調査、分析を進めた。 (1)1940年代後半から1960年前後までの教育課程改革における音楽科の動向を捉えるために、教育刷新審議会、教育課程審議会の議事録等で音楽科の取り扱いの解明を課題とした。 これについては基本文献の収集と音楽科の取り扱いの整理を行った。また1960年前後「道徳」設置の動きの中で展開された民間の音楽家や日本教育音楽家協会等の団体、楽器産業界などを巻き込んだ音楽科の時間数確保と廃止反対運動の展開について関係資料をもとにデータ化した。 (2)1940年代後半からとりわけ1960年前後までの教育課程編成と授業実践の実態を把握するために、公立小学校、教育学部附属小学校のカリキュラム資料、当時の雑誌記事、関係者への聞き取りによりコア・カリキュラムから教科カリキュラムへの移行過程とその背景要因並びに教材構成の類型化を課題とした。 これについては、宇都宮師範学校附属松原小学校でのオペレッタを中心とした音楽授業の実際、京都市の錦林小学校での市行政を巻き込んだ器楽教育の振興とその音楽の実際について、和歌山市内、僻地地域など県下の音楽科教育の実際について関係者への聴き取り、関連資料の収集を通してデータ化を行った。また1950年代以降の文部省実験学校での音楽科の研究変遷を関連資料から分析し、段階的な指導による発声法、創作活動に重点をおいた音楽科の学力観を探った。
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