ものづくりに対する器用意識や意欲の低下が問題とされて久しい。また、義務教育課程における学校教育の技術教育は中学校しか保障されていない現実があり、これらの課題を解決しているとは言い難い現状である。初等教育からの技術教育は、英国など先進諸国の義務教育課程では、Design and Technologyが必修教科として実施されている。しかし、これまで、社会的に技術教育が保障ている国nの児童生徒のものづくり意識を比較検討した先行研究はなく、技術教育の実施による学習の成果に関する実証的な検証は何一つない。 このようなことから、本研究の目的は、日本と英国の児童生徒のものづくりの意識を比較検討することにある。方法は、質問紙法でおこなった。質問紙の構成は、8カテゴリ、42項目よりなる。調査期間は、2006年〜2007年に実施した。調査対象は小学3年生〜中学3年生の児童生徒に限定した。日本の児童生徒は、14000人であり、英国の児童生徒は、3000人であった。2006年9月〜10月、英国の小学校(校)と中学校(校)を訪問しEastcote PrimarySchoolの学校長をはじめ13校の校長に、質問紙調査の協力依頼をした。最終的に、小学校8校、中学校7校の協力が得られた。英国の調査は、2007年2月〜3月に行った。回収は、3月に終了し、現在、英国のデータは入力中である。 一方、回収を終えた日本の児童生徒のものづくりに対する意識は、6年前に同一の質問紙で調査したものと比較検討した。その結果、2006年は1999年に実施したものより、全般的に低くなっていること、特に、小学5年以降から、ものづくりの意欲は明らかに低くなっていることが分かった。また、器用不器用を比較すると、不器用感が高まっていることが分かった。器用・不器用の要因分析を行った結果、器用感は、技能と知識に裏付けられた関係性が示唆された、しかし、不器用感を抱くにはその関係性は認められなかった。以上の知見を得た。
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