研究概要 |
本研究の目的は,日本と英国の児童生徒のものづくりの意識,及び遊び・生活を国際比較し,学齢期におけるものづくりの意識の実態を明らかにすることにある。調査方法は,両国の児童生徒(小学校3年生〜中学校3年生)を対象に,(1)「ものづくりにおける児童生徒の器用不器用感」,(2)「児童生徒の生活・遊び・ものづくりの意欲と実態」に関する質問紙調査である。 本年度の研究成果は,次の通りである。質問紙を回収した対象児童生徒数は,日本12581人,英国1957人であった。両国の児童生徒のものづくりの意識をみると,小3〜中3の英国の児童生徒は,全学年で器用意識は明確に高く,また計画した通りに進められる自信,構想した通りにできる等の遂行意識,速くできる,色をはみ出さず塗れる等の技能意識,家庭に道具や材料がある家庭環境整備の意識,幼いころからのものづくりの経験意識等が,日本の児童生徒より明らかに高かった。さらに,親や友達からの他者評価,仕上がりはきれいなどの自己評価,働く人への関心も高かった。一方,英国の児童生徒は他者依存的意識が高く,ものを上手くできるという自尊感情が高いことが分かった。 以上のように,日本の児童生徒は,ものづくりの経験量や家庭環境整備の低さなど日常的生活経験の機会の希薄さを背景に,強い自律的意識を促される反面,他者からの評価が少なく,自尊感情意識が高まらず,器用意識や技能意識の低下,働く人への関心の低下も招いていると推察した。本結果は,日本と英国の児童生徒のものづくり意識を国際比較した最も新しい実態的知見といえ,ものづくり立国をめざそうとする日本のものづくり・技術教育のあり方に,極めて重要な示唆を与えると考える。
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