本調査研究の目的は、わが国の図画教育界で注目を浴びた青木の図画教育の未調査部分の実地取材等を行い、当面、それらの電子データ化により基礎資料として整備・保存することにあった。 調査研究の成果は、3部構成で報告書としてまとめた。以下は、成果の具体的内容である。 (1)第I部「総合的研究編」 第I部は、青木實三郎の図画教育理念・内容・方法等について研究協力者と分担執筆してまとめた。また、山本鼎や大竹拙三等の青木の教育実践と結びつきのある人物も取り上げ、いわゆる「想画」に関わる全般について論述している。 (2)第II部自筆原稿「郷土主義児童画教育之体験と主張」のデジタル化 第II部は、青木の未発表の自筆原稿「郷土主義児童画教育之体験と主張」を書き起こしデジタル化した。本自筆原稿は、「想画」として認められる以前の實三郎の図画教育理念であり、その内容・方法等の論述である。そのことは、本自筆原稿が、「想画」以前の實三郎独自の図画教育のありようを知るうえで貴重な資料になることを意味する。 (3)第III部「想画」のデジタル画像化 第III部では、現存する青木の指導による児童画のデジタル画像化と、その聞き取り調査をまとめた。現存する児童画は、個人所蔵による保管のため、その全ての作品のデジタル画像化を図り、美術教育史の基礎資料としての整備が急務だった。本調査研究により、全児童画と青木作晶は、ほぼデジタル画像化できた。このことにより、一定程度の継続的な保存を可能にしたことが大きな成果である。青木の未発表原稿とともに美術教育の史的研究の基礎的資料として今後活用されることと考える。
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