研究概要 |
本研究の目的は,後期中等教育や高等教育での数学教育に関して,生徒の数理的思考の広がりを図る教育を検討することであり,今年度の主要な研究成果は次の通りである。 1.中等学校数学の第一類の教科書は,新しく関数の内容を取り入れるなど,数理的思考を高める刷新を行った教科書である。この教科書における教材の構成方法を分析し,数学を応用する場合の近似値に関する扱いや,微積分の考えをグラフで視覚化する工夫などに関する扱いなどに注目し,その教材性を調べた。この研究成果は,来年度の学会発表で示す予定である。 2.離散的な側面をもつ図形教材の発展的側面を考察した。具体例として,学校数学における多角形の内角や外角の和の性質をとりあげ,その不変性が図形考察の広がりをだすことを示した。その発展として折れ線多角形の場合を考察し,図形の向きに関する性質や回転数などが図形の不変性に大きく関与することを特定した。この研究成果は数学教育学会で発表した。 3.数学教員をめざす大学生の数理的思考を発展させるためのテキストを編纂した。このテキストは,平成19年3月に培風館から出版される。テキストでは,中等教育に携わる数学教員の数学的な資質を高めるために,実際の教材に即した内容で,数学的な考え方の本質的な部分やその背景を示すように努めた。作成にあたり,広島大学大学院教育学研究科数学教育学講座の教科専門を担当する教員や,福岡教育大学教育学部の教員の協力を得ることができた。 4.大学生によるコンピュータを活用した「数学の問題作り」の活動について,その成果を数学教育学会で発表した。また,高校生による「数学の問題作り」関する活動を,愛知県の一人の高校教員と本研究者との共同研究で行い,実践を通した考察を行った。その成果を論文にまとめ,数学教育学会の雑誌に投稿中である。
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