本年度は対人関係認識の発達モデルを作成するために、対人関係認識の発達的変容を明らかにする目的で以下のとおり実施した。 (1)子どもの発達段階における対人関係の特徴を、H.S.Sullivan、井上健治、田中熊次郎の理論から明らかにし、調査研究のための対人関係認識モデルを作成した。 (2)作成した対人関係認識モデルに基づいて、人間関係と社会的責任とに価値をおく道徳教材を2種類開発し、その教材を用いた道徳授業の指導案と調査用のワークシートを低学年、中学年、高学年用に作成した。作成した指導案に基づいて、低学年、中学年、高学年各2クラスで研究授業を行い、討論前と討論後で子どもの意見をワークシートに記入させ子どもの思考変容を調査した。 (3)収集したワークシートを、低学年、中学年、高学年ごと、価値項目ごとに分類し、討論前と討論後での変容と、低学年、中学年、高学年での発達的変容をセルマンの役割取得理論にしたがって分析した。その結果明らかになったのは次の点である。 (1)人間関係の価値項目では、低学年から中学年へと加齢にしたがってより広い範囲での人間関係に価値をおく判断をすることが明らかになった。 (2)社会的責任の価値項目では、低学年から中学年へと加齢にしたがってより広い範囲での社会的責任に価値をおく判断をするが、高学年では逆で、より広い社会的責任に価値を認めながらも実際の判断では身近で直接的な関係を重要とする判断を行うことが明らかになった。 以上の結果をふまえて、来年度は大学生への調査も行い、対人関係認識の発達の方向性をみすえた上で、小学校での道徳教育プログラムの策定を行いたい。
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