研究概要 |
本年度は昨年度作成した対人関係認識の発達モデルに基づいて、道徳的判断力を育成するための道徳授業モデルを策定し、有効性を検討するための調査研究を行った。具体的には、以下の通り実施した。 1)大学生への調査結果から、小学校の子どもに育成すべき道徳的判断力を、セルマンの社会的視点取得能力の発達段階論から、2段階の相互性の獲得と3段階の第3者的視点の獲得におき、それに適当な教材を新たに開発した。 2)開発した教材を用いて、小学校3年生から中学校2年生までの児童生徒を対象に,ふたつの調査を行った。ひとつは児童生徒の対人関係認識の発達レベルについてのアンケート調査であり、もうひとつは開発した道徳教材の有効性に関する調査である。比較の対象として、「役割取得タイプ」と「主体的解決タイプ」のふたつの道徳授業を行った。 3)収集したアンケート調査は、学年ごと、道徳授業タイプごとに分析し、発達レベルを明らかにした。道徳授業は、収集したワークシートを学年ごと、カテゴリーごとに分類して、有効性について検討した。現在のところ中学生の分析のみ終えている。本研究の結果、明らかになったのは次の点である。 (1)中学1年生までは「役割取得タイプ」が有効だが、中学2年生で逆転し、「主体的解決」タイプの方が有効になる。 (2)昨年度の結果と照らし合わせてみると、小学校5年生から中学1年生までは役割取得を進めることが道徳性の発達に有効で、中学2年生から自分の考え方や自主的判断力を鍛えることが道徳性の発達に適当だと考えられる。 小学校低学年から中学生までを見通した道徳教育プログラムの策定を、来年度の課題とすることにする。
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