研究3年次(最終年度)も、研究の総括と資料の補完のため、平成20年9月、プランゲ文庫(メリーランド州立大学)に現地調査した。その結果、次のような知見を得た。 1国内の図書館等においては、戦後初期の単行本の所蔵は散見されるが、本研究で重点的に調査した国語副読本、学習参考書、問題集の類は、国立国会図書館・国立政策教育研究所教育図書館を初め、殆ど所蔵されていない貴重な資料群であることが分かった。 2国語副読本は児童文学との境界が難しいものもあるが、子どものための読み物として積極的に刊行されている。また学習参考書・問題集など(小・中・高)も、競うようにして大量に発行されている。その結果、類書が多く生み出され、中に商業主義も感じられる。 3単行本の内容上の特徴として、新教育を展開する意気込みが感じられるものが多く、開発・新生の進取の気風の中で、教育への情熱、子どもへの期待が熱く伝わってくる。混沌としたリ・スタートの中から、教育の原点、教育の普遍性を再思させられる。 調査したプランゲ文庫資料の目録と、それに基づく分析・考察の結果をまとめて、研究成果報告書を作成する。 なお、本研究に深く関わって、平成19年8月6目、九州大学でシンポジウム(被占領下の国語教育と文学-プランゲ文庫所蔵資料から)を開催した。筆者はパネリストの一人として「プランゲ文庫資料から見える戦後初期国語教育-国語教科書・副読本の実態と特色-」を研究発表した。その報告書が、近々刊行されることになっている。
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