平成18年度の研究の概要は以下のとおりである。 1.小・中学校において取扱われ得る「史料」の収集 文書史料に関しては、解読作業に時間を要するものは実際の授業での取壊いが困難なため、活字化されたもので教材化可能なものを収集し、データベース化することを試みた。加えて、より広い意味での「史料」として絵画、実物、地図(絵図)等の視覚的「史料」の収集を、図書館・文書館での複写、博物館での写真撮影等を通して行った。 2.教材用「資料」の収集と現状分析 近年の歴史博物館は小中学生、一般市民の歴史学習用に展示形態を工夫しており、特に精巧に作成された模型やシミュレーション等による再現資料を多用した展示、それらを活用したオリジナルの学習資料の作成も行っている。これらから特色あるものを「資料」として収集し、歴史学習の視点から分析と意味付けを試みた。 3.「史料」と「資料」を関連付けた実践的・試案的研究 (1)伝承教材の活用を試みた研究 小学校の実践者の協力を得て、地域の伝承教材に対し、史書の記述等の「資料」を活用して読み解いてゆく授業を試案的に実践し、その学習展開過程を分析した。この結果、歴史研究では一般に、「史料」と「資料」との往復過程を原動力としながら、探究は「事象そのもの」から「事象の関連諸事象」へと進行してゆくのに対し、歴史授業の展開過程は「資料」に張り付きながら「事象そのもの」と「事象の関連諸事象」との往復過程を原動力に、学習者の問題意識に応じて「史料」へと向かってゆくことが明らかになった。 (2)古地図の活用を試みた研究 山口市鋳銭司地区を描いた数枚の古地図を手がかりに地域の発展を読み解いてゆく授業、及び山口県萩市の数枚の古地図を手がかりに都市の形成過程を読み解いてゆく授業を、大学院生の協力を得て試案的に構成した。
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