本年度は、以下の3点を実施した。 1)前年度に収集した、博物館における歴史展示物の動向から、近年の博物館における歴史展示用の「史料」と「資料」の関係設定のあり方を明らかにし、それを基にした学校歴史学習の可能性を、先行実践などをもとに探った。 2)前年度に試案的に開発した、「史料」としての古地図と「資料」としての地域案内マップを相補的に活用する単元計画を、小学校教員の協力者を得て小学校第4学年・地域の開発単元において実際に実践し、その有効性を検証した。その結果、(1)小学校第4学年という年齢段階での教材・学習活動としては全く問題なく、むしろ現代地図の規則制約にとらわれない子どものほうが古地図史料を柔軟に読み解いてゆくこと、(2)一般にこの単元はある一つの開発事例をもとに地域の発展を学ぶことが多いが、「史料」と「資料」の活用により、より広域的な視点から地域をとらえる学習を行い得ることを明らかにした。 3)現職派遣の大学院生と共同で、「史料」を実物的な「モノ」教材に絞り、この種の「史料」から始まる探究的な学習過程を、「モノ」の種別により、(1)地域的・時代的特定性が強く、唯一性の高い「史料」、(2)地域的・時代的特定性は強いが広範に分布する「史料」、(3)地域的には特定できるが通時代に分布する「史料」、(4)地域的・時代的特定性はなく身近に入手できる「史料」、の4種に類型化し、それぞれの学習過程モデルによる4つの単元を開発した。
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