小学校第1〜6学年の児童(653名)を対象として実施した算数基礎テストの結果を分析した。特にその中で第1〜4学年用のテストについて計算問題に対する児童の反応を誤ルールの適用の観点から検討した。本算数基礎テストは算数を苦手とする児童の早期発見と指導計画立案のための基礎資料を得ることを目的としたものであり児童による誤ルールの適用を系統的に探索することを目的としたものではなかったが、計算結果をみると誤ルールを保持していると思われる事例がいくつか見られた。多位数の乗除計算では数の合成分解、数の相対的な大きさの判断、基礎的な加減法や乗法九九などを総合して用いる必要があることから、乗除法を扱うに先立って加減法の基礎を確実なものとしておく必要がある。また算数基礎テストの結果を資料とし、香川大学教育学部特別支援教室で通級指導を受けている児童に対する加減法の筆算指導についての事例研究を行った。これらの結果をもとに、個別指導のために算数基礎テストを用いて児童の算数に関する知識技能の見取りを行う場合の留意点について検討した。 算数基礎テストについては、現在、香川大学教育学部特別支援教室において改訂作業を行っており、この年度末には小学校第1〜3学年の児童を対象とした試行版を作成し試験的に実施した。次年度にはこの結果をもとにテスト問題にさらに検討を加えるとともに、第4〜6学年の児童用のテストを開発する。それによって本研究が目指している児童の乗除法計算の様相の把握と指導法の開発を進めることを予定している。
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