研究課題
基盤研究(C)
本研究は、「遊び」の活動に着目して、日本と韓国の子どもの日常生活や「遊び」の現状を調査し、子どもの置かれている実態を把握する。そして、いわゆる「実技教科」と呼ばれる、音楽科、図画工作科、体育科、家庭の学校での教科カリキュラムと子どもの日常生活における「遊び」の経験がどのように関連しているかを分析し、「遊び」と実技教科カリキュラムとの関係を考察することを目的とした。これまで私たちが行ってきた「教科教育における授業評価システムに関する教科横断的研究」(平成13-15年科学研究費助成)及び、戦後の教育課程比較や学習指導方法の比較をまとめた「日韓教科教育入門」(平成17年)の研究において比較的似通った教育課程を持つ両国で、子どもたちの「遊び」と実技系教科がどのように関わり、結びついているかの比較を行った。これまでの研究成果を元に、まず、子どもの「遊び」の日韓比較を、合計約2000名の児童を対象として都市部と地方に分け調査を行い、当該調査の分析と考察を行った。これについては「日本・韓国の子どもの遊び比較研究」と題し、刈谷三郎が2007年12月2007International Leisure Recreation Seminar(ソウル)において、その成果を発表した。韓国における高学歴志向、少子化、受験といった社会的背景が、子どもの「遊び」に深く投影されていることを指摘した。質疑の中で東北アジアでの研究への発展が示唆された。引き続き、子どもの「遊び」の実態把握からよみとれる日常生活経験を軸に、実技教科カリキュラムとの関連において考察を行い、遊びを自発的な自己完結的な子どもの日常生活文化として考えると、日本の子どもは実技教科が形成する学校教科文化と子どもの日常生活文化の乖離を強く意識し、韓国の子どもの方が、日常生活文化と学校の実技教科文化との接続を認識し、融合的に把握していること論証した。これらの研究成果は韓国・日本教育学会誌(韓国・日本教育学研究)において「実技系教科と遊びの日韓比較研究」として掲載予定(2008年8月)である。しかしながら、現時点では当初の目的の一つであった、新たな実技教科カリキュラムモデルの提案には至らなかったことが課題として残された。
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韓国・日本教育学研究 13-1(掲載確定)
the Educational society magazine of Korean and Japanese 13-1