本研究は、現代のメディア・ミックス状況における子どもの読書指導の可能性と課題を明確にとらえるために、子どもの物語受容の根幹に潜む物語典型の内実を、最も日常的な物語体験であるテレビ視聴を軸に探ろうとした者である。本、テレビ番組、DVD、ゲームといった個別の媒体を問題にするのではなく、現代の子どもが多様な媒体を往還するなかで受け止めている<物語言語>のありようを対象テクストと子どもが出会うコンテクストの分析・検討を行うことを基本とする。それによって媒体の差異を越えて、今日の子どもの物語スキーマを解き明かす物語の構造的特徴が見えると考えたからである。 具体的にはテレビ番組「世界名作劇場」から、「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」を取り上げた。児童文学の名作古典とされる原作とアニメーション番組を比較研究することで放送形態によって物語がどの様な変容を遂げたか、どのように再生産されて「見る物語」として子どもの物語理解、自己認識に反映するのかを考察した。 また、今日の子どものメディア環境を明らかにするため、小学生(4〜6年生)338名、中学生(1〜3年生)439名、比較の対象として大学生(1〜4年生、2校)519名のアンケート調査を行った。実施した「メディア環境アンケート」は多義に渡るもので、本報告では、<個人情報><メディア環境>(1情報を得るメディア2大切なメディア8どこでアニメを見るか9マンガを読むメディアは何か)<読んでいる雑誌・本>(17アニメを見て原作を読んだか18原作を読んでアニメを見たか)<テレビ視聴>(19誰と好きな番組を見るか21テレビの視聴時間23録画24ビデオやDVD)<ゲーム>(27PCゲームをするか35ゲームをする時間)の各項目と記述による「物語を想像して読む」のみの集計となっている。
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