3校の授業研究を実施した。事例1は、4年生40人を対象に「あなたへ」6冊を選出し、6月から10月まで10日間授業が実施された。対象の学級は、授業を受ける態度がなっていない、教師の指示が通らない。このような学級の雰囲気を建て直し、学級としてのまとまりのある環境をつくるために、担任教師は「あなたへ」の授業を構想した。授業の目標は、「自分を見つめ、そこから他者との関わり方や相手のことを考えられることへとつなげ、最後に、自分のよりよい生き方につなげることである」。抽出児Aの(1)自尊感情の高まり、(2)周囲の児童との有機的な人間関係の発展、(3)「しあわせ」についての考察の深化について授業分析した。事例2は、6年生32人を対象に「あなたへ」4冊を選出し、10月から2月まで10回の授業研究が行われた。この事例は、児童の内面に深く入って、彼らの自己理解を促進し、自分に自信をもたせ、ひいては他者との間に新たなる境地からの関係構築を目指して授業が計画された。担任教師は、子どもの内なる声を聞く、子どもたちに自分自身の内なる声に気づかせる、子どもと子どもをつなぐという視点をもち授業を展開した。事例3は、6年生28人を対象に、1月から3月まで「あなたへ」5冊を選出し、8回の授業を実施した。この学級は教師の指導力が行き届いており、授業の進行も板書も児童が行い、教師が授業の分岐点や急所の場面では補助的に板書する。この授業研究でも、一人一人のイメージを大切にし、パワーポイントで映像に映し、絵を見ながら言葉を紡いでいくという手法をとった。「あなたへ」の中で描かれる絵に引きつけられて奔放にイメージをふくらませ、お互いの言葉と思いをつなぎ合わせていった。「あなたへ」の教材が児童の想像力を引き起こし、自分が何かしなければならないという行動化と他者理解の接近を可能にした。そのため、この授業研究が我が国においても、有効であると思われた。
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