研究概要 |
日本語は母音主体の構造をもち、母音はあらゆる言葉に入り込んでいる。また母音に対する感覚は歌の種類や表現方法によって多様であり、一様に語ることは難しい。このような<母音に対する感覚の多様>性が日本語歌唱の議論を難しくしているのではないかとの認識の下、日本語の母音について、歌手や教育者がどのような感覚をもっているかを調査した。 各者の主張からは、日本語歌唱において母音の響きが重要であるとの共通認識を見いだせたものの、母音の響きを統一すべきか否か、また母音の響きの多様性とは、どのような面での多様性かといった問題については、一致した認識を見いだせなかった。 一方、日本語歌唱を指導する立場にある全国の幼稚園1,000園を対象に実施した『子どもがうたう日本語の歌に関する意識調査』(有効回答率35,7%)の結果、これまで日本語の発声や発音について学んだことがあると回答した幼稚園教諭は31.9%に留まり、84.1%の幼稚園教諭が日本語の歌唱表現について機会があれば学んでみたいと回答している。この数値は多くの保育現場で日本語歌唱の関心が高いことを示していると共に、幼稚園教諭の養成や現職の幼稚園教諭の研修に、日本語歌唱を明確に位置づける必要があることを示していると言えよう。 以上のような歌手や教育者の調査結果を踏まえると、日本語歌唱の発声と発音の統合的教授法の開発のためには、認識や表現方法の違いを越えた教授法が必要であると共に、説明的な教授ではなく直感的な教授が有効ではないかとの仮説に至った。 その教授法のツールとして、オノマトペに着目した。オノマトペを使った指導は、スポーツ指導での先行事例があり、本研究では日本語歌唱の発声と発音の統合的教授にオノマトペを使った実証実験により、発声と発音が具体的に変化するデータが蓄積されつつある。
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