本研究の目的は、小学生の暴力的行動全般に関して、暴力的兆候を示す場合も含め、科学的な根拠に基いた議論を行うために必要となる基礎資料を収集し、その資料に基づいて背景要因や対応策の検討を行うことにあった。従来の研究の多くが、少数の事例に基づく研究であるのに対し、できるだけ大量の事例を収集して分析を行うことが、本研究の特徴であった。 そのために、『学級担任調査』と『児童(生徒)調査』の二つを組み合わせ、2年間にわたって調査を行い、分析を行った。そして、(1)小学生をめぐる暴力の状況、(2)個別特殊な要因との関連、について検討を行った。その中から得られた一番の成果は、(3)発達障害等を原因とする「暴力的な行動」と、そうしたものを原因としない「暴力的な行動」の存在を確認できたこと、であった。 こうした結果は、少数の事例研究を繰り返すだけでは確認することが困難である。そうした事実を確認できたことは、本研究を実施したことの大きな意義であると言えよう。 また、本研究で用いた調査手法は、従来の手法では扱えないような比較的大量のデータを処理できる方法であったと言える一方で、学級担任の意識や認識の影響を大きく受けるものであることがわかった。今後の課題として、教師の意識や認識の影響を受けにくくするような調査の実施方法(資料の作成方法)を工夫していくこと求められよう。
|