研究分担者 |
金澤 貴之 群馬大学, 教育学部, 助教授 (50323324)
黒木 速人 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 特任助手 (00345159)
井野 秀一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (70250511)
伊福部 達 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (70002102)
中野 泰志 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60207850)
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研究概要 |
我々は,音声認識技術を用いた「音声同時字幕システム」の運用を行う中で,聴覚障害者が感じている字幕の読みにくさは,漢字等の誤認識だけではなく,言い誤りや会話的な表現など,話し言葉固有の性質にも原因があるのではないかと考えるに至った。そこで本研究では,話し言葉固有の性質による読みにくさを含む字幕を読んでいる時の眼球運動を測定し,読み返しの多さを定量的に調べると同時に,どのような表現部分の文章認知が困難であったかについて,被験者への聞き取りデータと合わせて実証的に明らかにすることを試みた。 検証の結果、「音声同時字幕システム」において,誤認識が全くない状態で話者の発話を忠実に文字化されていても,話し言葉固有の性質によって,読みにくさ,意味の理解しにくさが残されていることが明らかになった。 書き言葉は事前に準備され,周到に練り上げられた高度に圧縮された表現であるのに対して,話し言葉は,事前の準備なしにとぎれとぎれに冗長な表現で文を産出していくという違いがある。そのため,多数の従属節が繋がり,節と節の関係がつかみにくく,句点がほとんどない長大な文が産出されたり,そこに,前の文脈との関連がない接続詞が使用されたりすることが重なって,読みにくさが増していることが考えられる。 更に、聴覚障害者と聴者では,読みにくさが異なる表現部分があることも明らかになった。書き言葉ではほとんど用いられないが,話し言葉ではよく用いられる会話的な表現や用法は,日常会話の中でそれらを実際に経験することができない聴覚障害者にとって慣れない表現であり,違和感やとまどいを覚えるためであると思われる。
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