本研究は、音声言語を字幕化する際に、音声言語には含まれるものの文字化によって抜け落ちる幾つかの言語情報に焦点を当て、どのような言語情報の欠落が字幕の理解にどのように影響を与えるかを検証したものである。あわせて、表記の違いによる認知のしやすさも検討し、その結果を基に、効果的な字幕呈示方法を提案することを目的とした。なお、本研究は、理論的研究であると同時に、常に実験により実証的な検証を行うこと、それらの結果に基づく改良モデルを構築し、聴覚障害学生の情報保障に貢献する事を目指した。 前年度の研究においては、音声言語をそのまま字幕化することのよって字幕の読みにくさを生じさせる要因について検証した。その結果、音声言語に含まれる、イントネーション、ポーズ、フィラーなどの要素が文字化される際に捨象され、それによって、文字化された字幕が読みにくくなっていることが明らかとなった。 本年度ほこれまでの研究によって得られた知見をもとに、聴覚障害者にわかりやすく字幕を提示する方法を検討することとし、幾つかの方策を行いながら字幕運用実験を行った。そこでは、特に、音声を文字化する際に、話し言葉のポーズやフィラーの代用として改行を用いることが、どのような効果を生むかについて重点的に検証した。その結果、適切な位置での改行は字幕を理解しやすくする効果があることが確認された。また、運用実験後のアンケート調査の実施などにより、新たな字幕提示の方法がどのような効果を生んでいるのかを検証し、今後の課題の抽出、さらなる改良の方策を検討した。
|