研究概要 |
本研究は,学習障害を中心とした発達障害児の読み能力に関連する視覚の問題に焦点を当て,その改善を図るための評価ツールおよび援助プログラムを開発することを目的としている。 本年度は、読み能力と視覚効率に関する実態調査を小学校2年児童を対象に実施し、これまでに調査した3、4、5年生児童のデータとあわせて評価点換算表の作成を行った。 [方法] 対象児:小学校2学年児童85名(男子42名、女子43名) 1)視覚効率:Developmental Eye Movement Test(DEM)、及び直接観察による眼球運動の記録 2)読み能力:標準読書能力診断テストA型(低学年用):評価項目は「読字力」「語彙力」「文法力」「読解・鑑賞力」の4項目であった。 [結果の概要] 2年生児童のDEMの結果は、これまでに調査した3、4、5年生児童に比較して、最も低いものであった。このことは課題遂行時間だけでなく、課題遂行上のエラーにおいても共通しており、学年の推移とともに眼球運動が向上することが推測された。また、これらの結果に基づいて標準得点換算表を作成した。読みに困難を示した2年生児童(読み能力診断検査において総得点が-1SDより低いとされた児童)は18名存在した。これらの低得点児童とその他の児童のDEMについて比較したところ、読みの低得点群は、有意にDEM得点が低いことが確認された。このことは読み能力検査の「読字力」「語彙力」「文法力」「読解・鑑賞力」の各評価項目においても共通して認められ、2年生の段階では、読み能力全体に、眼球運動の問題が影響すると推測される。高学年では、速読能力にのみ眼球運動との関係が認められたことから考えると、読み学習の初期段階ほど眼球運動の影響が大きいと考えられた。
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