研究概要 |
1 本研究の基礎となる「学校教育一般」に関する法的規定の翻訳資料化 「教育課程」Lgo94,2003年改訂版を翻訳し解題を加えた。「教育課程」は、先に翻訳し資料化した「学校教育法」と並ぶ基本的な規定である。「教育課程」は1980年の旧版以降24年ぶりに全面的に改訂された。その後も数度の改訂を経ている。教師の主体的な創意工夫や各学校の自由な選択の拡大ならびに責任の明記などが強調された。同時に、旧来の教育課程の発展として「根源的価値」の重視が明記された。「根源的価値」とは、(1)人間の生命を侵してはならないこと(2)個人の自由(3)人間としての尊厳(4)すべての人には等しい価値があること(5)男女の平等(6)放置された弱者への連帯を内容とする。「根源的価値」が教育一般および障害者の教育に反映していく様相を精査する基盤としての教育に関する法的規定を資料化した。 2 ストックホルム、イエテボリ、リンシェピンの3都市でカールベック委員会後の変化の兆候に関するヒヤリング 「1990年代」はスウェーデンにおいても経済的および政治的な不安定の時代を迎えていた。若年労働者の失業問題は深刻で知識増強計画も画策された。政治的には社会民主労働党が辛うじて政権を維持する不安定状況にあった。1990年代はしのいだものの2006年9月の選挙では社会民主労働党が政権を失う。政治的不安定と経済的な停滞の中で教育と社会福祉の2分野は関心の的になっている。教育の分野における変化ならびに不変の状況をできるだけ精査し、状況が障害者の教育にどのように反映するに至るかを聴取し分析中である。究極的に特殊教育学校の制度および障害者の地域での統合の状況にいかに反映するかをさらに継続して探りたい。その一例が知的障害者を対象とする2種類の養護学校の一本化であろう。養護学校の児童生徒数の増加傾向は続いており、軽度の知的障害者の処遇ならびに統合の状況は継続的に調査する必要がある。
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