平成18年度は、幼児版Body Coordination Test(以下幼児版BCT)を用いて、学習に困難を示す児童のスクリーニングを行い、スクリーニングされた児童の生活場面で発揮される身体運動スキルの問題点を明らかにした。身体運動スキルの評定には、運動協応スキルアセスメント(Motor Coordination Skill Assessment:以下MCSA)を用いた。 スクリーニングの結果、幼児版BCTでTotal-MQ値85以下を示す児童は36名(4歳から6歳)であった。対象児のMCSA項目(15項自で構成)における通過率は、70%以上の子どもが通過した項目は「片足ケンケンができる」[お手本を見て十字(+字)がかける」(15項日中2項目)であった。通過率が50%〜60%台の項目は「開眼での片足立ち(5秒程度)」「片足ケンケン(5m程度)」「頭の上に週刊誌を乗せて歩く」「身体の正中線を交差する模倣(右手で左耳を押さえる)」「ボールを上手から投げる」「スキップ」「かたむすびができる」(15項日中7項目)であった。通過率が50%以下の項目は「閉眼での片足立ち(5秒程度)」「全身でのバランス姿勢(飛行機立ち)」「後方歩き」「片手でのボール操作」「片足での横飛び」「ブランコの立ち乗り」(15項日中6項目)であった。 この結果から、学習に困難を示す児童は、力動的エネルギーとリズム、巧繊性という運動属性や身体意識が関わる運動スキルに未熟な傾向を持つ児童の多いことが示された。一般的に子どもは、日常の遊びの中で全身を使った動きを経験し、それを繰り返すことにより、運動スキルの習熟度を向上させていく。つまり、運動スキルの取得は、それに関わる経験の量や質に大きく影響されるのである。本研究により、学習に困難を示す児童の運動遊び経験の実態を明らかにする必要性が示唆された。
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