本研究の目的は、学習困難幼児の発達を縦断的に分析するとともに、ムーブメント法による支援の有効性について検証し、就学前教育に適用することが可能な具体的支援法を確立することである。 学習困難児の身体運動面の発達特性と行動特性に関する縦断的研究を行った結果、以下の点が明らかになった。すなわち、学習に困難を示す児童の身体運動発達は、特に、身体両側運動機能の発揮に困難を示すこと、また、対象児は身体描画において、上肢、下肢、胴体のバランスが未熟な様相を呈したことから、自らの身体意識、特にボディ・イメージにおいて、偏りを示すことが示唆された。さらに、保育場面における対象児の動的活動(主として動的遊び)を観察したところ、その実態は、自発的に運動遊びに取り組むことが少なく、その種類も非常に限られたものであることが明らかになった。 これらの結果をもとに、学習に困難を示す児童の発達支援に向けたムーブメント法による介入を行った。支援プログラムの内容は、トランポリン、ユランコを活用した感覚運動ムーブメント、ロープ、フープ、スペースマットを活用した知覚運動ムーブメントである。これらのムーブメント法による介入の結果、体性感覚、固有感覚、前庭感覚への働きかけは、対象児の身体意識能力向上に有効であること、また、視・聴覚-運動連合を中心としたプログラムは身体両側運動を伴う身体協応性の向上に向けた支援プログラムとして有効であることが示された。
|