近年、ID児(学習障害)やADHD児(注意欠陥多動性障害)への教育的処遇の重要性が指摘されている。本研究の目的は、学習に困難を示す児童の発達を縦断的に分析するとともに、ムーブメント法による支援の有効性について検証し、就学前教育に適用することが可能な具体的支援法を確立することである。 平成20年度は、学習に困難を示す児童の身体運動面の発達特性・行動特性をもとに、事例に対するムーブメント法による介入を行った。介入内容は、特に対象児の身体意識の向上を目指した支援である。具体的には、トランポリン、フープ、スペースマット、ビーンズバッグ、コクーン等のムーブメント遊具を活用して、身体図式に焦点をあて、それを高めるムーブメントプログラムを実施した。支援の有効性について検討するために、対象児の身体画を分析したところ、頭、上肢、胴体、下肢がバランスよく描かれるようになり、加えて身体細部も描くことが可能になり、対象児の身体意識の向上が示唆された。また、様々な動的活動場面における身体両側機能の発揮に向上が認められた。 さらに、これまでの研究成果をふまえ、学習に困難を示す児童の支援を意図した支援プログラムの構造化を行った。このプログラムは、感覚運動ムーブメント、知覚運動ムーブメントの二側面から構成され、学習に困難を示す児童のみならず、他の児童も含めて集団で取り組むことができるものであることから、教育・保育現場でもその活用が可能であることが示唆された。
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