研究概要 |
通常学級で学習困難を示しながらも、特殊領域・方法に関して、とくに理科で才能を併せもつ「二重に特別な」(2Eの)児童生徒の特別な学習ニーズを識別して、理科の学習を個性化する方策を探ることを目標とした。そのために今年度は、前年度に実施した公立小学校の調査において対象者として抽出された「学習につまずく」児童のうち、今回開発された「理科才能行動チェックリスト」で才能を示した児童を追跡調査した。4年生および5年生の男児各1名を含む学級で、理科担当教師が行った各々一単元の授業を記録観察した。主な目的は、学習困難児・通常児の理科に関する才能行動をより詳細に把握すること、また理科の具体的な単元について、学習困難児の才能を生かすような学習上の支援(働きかけ)・評価のポイントを実践的・開発的に提案することであった。このために,まず理科の当該単元の観点別評価基準表(ルーブリック)を開発して、対象児等について教師が単元進行中に評価を行った。また「支援のポイント」を教師に提示して、児童が図入りのプリントに描き込む作業を多用したり、物作り等じかに触れる活動を多く取り入れたり、グループ(班)活動で他児との協力を促進したりした。さらに、単元の事後に児童に自己評価シートで、思考・関心・自信・意欲等について評定させた。また他者評価シートで、同じ班の他児について、技能・努力について評価させた。これらの試行的授業実践を通じて、対象児の創造的活動や動機づけの高まりを明示できた。一人の2E児が含まれる授業全体の記録と当該児の学習行動の分析によって、理科の授業の具体的な単元で、2E児の指導モデルの先駆例が提示された。
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