1.障害を理解するための絵本(以後「絵本」)を幼児教育・保育を志望する学生、現役の保育者、障害児の保護者らと共に制作し、その絵本をインクルーシブ保育・教育に効果的に役立てるために効果測定を行った。 園での読みきかせと配布のため仮製本を試みた「絵本」は(1)「たいせつなあなたへ(14頁)2007」:ダウン症をもつ保護者の気持ちの理解、(2)「かみさまのおくりもの(18頁)2007」:ダウン症児の理解(3)「じゅんじゅん(24頁)2007、改訂版(20頁)2008.自閉症の理解とその支援」、(4)「たっくん(20頁)2008:自閉症の理解」、(5)「ともだち(24頁)2008:自閉症の理解」、(6)「こえのおんど(24頁)2008:学生や子どもの障害理解」を制作した。その内(1)ら(5)の「絵本」を9カ所の保育園の年中・年長クラスで読みきかせの後、園児による描画とインタヴュー(録画)、保育士へのインタヴューと質問紙により効果測定を試みた。いずれも自分とは異なっている子どもに関心をもたせる事に役立つ事が期待できる結果であった。「絵本」の読みきかせの効果的な方法も園児や保育士の反応を検討し、実践に役立つようにまとめた。 2.「絵本」の制作をとおして、幼児教育・保育に関わる学生らへの「障害」を理解するための教育プログラムを試作した。 主に「絵本」を通して「障害」の理解と人間理解の深化を目指した基本概念の仮説を考案し、図式化した。そして、筆者の「障害の理解の基本概念」の仮説に則り「障害」を理解するための教育の実践過程を担当授業科目「発達障害論」等をとおしてまとめた。「障害理解」には段階があり、その前提に、「自分とは違っているものを違ったままで受けとめられること」が求められ、自分との違いを正しく受けとめていけるように援助していく必要がある。この違いの理解が人間の理解の深化につながっている事が、障害理解教育の実践過程から示唆された。
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