発達障害歴のある成人を協力者として、子供では実施の容易でない科学技術的研究を行うことを通じて、発達障害の成因解明に近づく事、初等教育と高等教育の連続性・一貫性を高める事、発達障害歴のある成人の社会人としての成熟を促す社会システムを築く事をめざし、大学の学際融合教育研究課題として企画開発を行った。 論文「Cognitive enhancement and longevity」の中で、現生人類は進化の中で既に子育て戦略として高齢者の寿命を延ばしたという説を念頭におき、年代等の異なる社会構成員間の相互作用や、社会内での役割を通じた、脳の可鍛性に注目する事が重要であると論じた。 2009年6月欧洲連合の会議にて、日本社会の長期展望を、特に脳科学の発展による人々の生活支援という観点から、論じた。 2009年7月に、統合失調症を、人類の進化・言語能力の発現、ヒトの発達と社会的相互作用の観点から考察し、学会発表を行った。発達障害を単なる「機能の欠落」として捉えず、人類の特性の多様な現れ方の一つとして捉える観点をしめした。又、ヒト型ロボットの発達・言語機能・社会性と比較を行うことによって、新たな人工システムによる情報処理の可能性を示した。 2009年10月には、国際学会において、認知哲学のセッションを企画した。社会の構成員の中で、複雑で予測不可能な社会構造や変化に適応する際の認知能力には多様性があるにもかかわらず、人々がそれぞれの仕方で社会に関与し、共生してゆくための方法を、多分野の研究者の観点から議論した。 2010年1月には、電子情報通信学会・発達障害支援研究会の活動の一環として、大阪大学・中之島センターにて公開講演会を開催し、教育訓練・医療・研究、報道や産業界の観点からともに検討した。 2010年1月発行の「よくわかる認知科学」の中で、認知神経科学の在り方と社会設計の相互作用について概説した。
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