研究概要 |
本研究の目的は,障害理解授業等「交流及び共同学習」を推進するために整備すべき環境を明らかにすることである。本年度は以下のように実践研究を検討,整理し,研究成果報告書を作成した。 (1)障害理解授業の教材や学習プログラムの検討:研究代表者が10年間にわたって実施してきた障害理解授業「やさしさってなんだろうな?」を分析し,6年間一貫して展開する学習プログラムと教材を精選した。この成果を用いて通常の学級の担任が学級の特性を活かした授業展開を実施した。子どもたちは,この授業によって障害のある人を理解するにとどまらず,周囲他児との関係について学んだり,自分自身について学んだりすることが明らかになった。(2)他者理解力を育てるための学級経営や授業の検討:(1)の研究過程において障害や障害のある人を理解するためには,他者理解力と自己理解力とが必要であるとの仮説が提起され,授業研究を実施した。その結果「自分はどう考え,どう動いていくのかよいか」を主体的に考え,議論をくり返すことが,他者理解力や自己理解力を育むことにつながることがわかった。(3)交流及び共同学習を円滑に実施するための条件の検討:特別支援学校との交流及び共同学習を継続的に実施している小学校から資料収集した。その結果,教育課程に交流及び共同学習を明確に位置づけること,評価の視点を明確に持つこと,実施前後の打合せを丁寧に実施すること,子どもたちの気づきを教師が気がつく余裕のある授業展開をすること,子どもたちに親しみのある活動を入れておくことなどが,重要であることが明らかになった。これらの成果を総合的に考察し研究成果報告書『友だちをわかろうとすること,自分を知ろうとすること-交流及び共同学習や障害理解授業で子どもたちが学ぶもの-』(国立特別支援教育総合研究所F-150)を作成し公開した。
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