研究概要 |
完全交叉のレフシェッツ性問題に関して、研究分担者の渡辺純三氏との共同研究により、次の成果を得ることができた。この結果は、共著論文"The central simple modules of Artinian Gorenstein algebras (Journal of Pure and Applied Algebra)"として出版される予定である。 まず、標準的な次数付環がレフシェッツ性をもつための同値条件を見つけた。とくに、Central simple加群による同値条件は、強レフシェッツ性をもつかどうかの判定に対して、埋込次元に関する帰納的な議論を可能にした。 1.標準的な次数付アルティン代数が強レフシェッツ性をもつ必要十分条件は、ある1次式に関する随伴次数付環が強レフシェッツ性をもつことである。弱レフシェッツ性についても同様である。 2.ゴレンスタイン・アルティン代数が強レフシェッツ性をもつ必要十分条件は、ある1次式に関するすべてのcentral simple加群が強レフシェッツ性をもつことである。(2の同値性は1の同値性を使って証明される。) この同値条件を使って、強レフシェッツ性をもつ完全交叉として、次のような例を見つけることができた。 3.n変数多項式環R=K[x_1,x_n]の斉次多項式からなる正則列f_1,f_2,g_3,g_4,g_nを考える。いま、2つのf_iは任意であるが、残りn-2個の各g_jはある1次式のベキとする。このとき、この正則列で生成される完全交叉は強レフシェッツ性をもつ。 4.n変数多項式環のn個の基本対称式に変数のベキを代入して得られる対称式(再び正則列になる)から生成される完全交叉を考える。このとき、それらの対称式の次数について、若干の仮定をおくと、この完全交叉は強レフシェッツ性をもつ。 5.3変数多項式環において、次数が連続する3つのベキ和多項式は完全交叉になり、かつ強レフシェッツ性をもつ。 次は興味深い問題である。 問題:対称式からなる完全交叉はいつ強レフシェッツ性をもつか?
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