研究分担者 |
石田 正典 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30124548)
尾形 庄悦 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90177113)
梶原 健 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00250663)
吉田 健一 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 准教授 (80240802)
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研究概要 |
正標数の局所環に対してHilbert-Kunz重複度とよばれる,環のフロベニウス写像に関する特異点の性質を反映する不変量が定義される.非特異射影曲線上の錐特異点の局所環のHilbert-Kunz重複度は,その定義式に付随したベクトル束のフロベニウス引き戻しのHarder-Narasimhan(HNと略す)filtrationを用いて記述されるが,正標数特有の問題として,フロベニウス射による引き戻しでベクトル束の半安定が保たれないという困難がある.これに関し,非特異射影多様体上のベクトル束Eをある有限の回数(n回とする)フロベニウス射で引き戻したものはその後何回フロベニウス射で引き戻してもHN pieceの半安定性が保たれることが知られている.Eのn次フロベニウス射による引き戻しがこの性質をもつのに必要な最小の引き戻し回数ν(E)は興味深いEの不変量である.例えば,Eとして種数2以上の非特異射影曲線上の直線束のe次フロベニウス順像を考えると,ν(E)=eが示される.直線束のe次フロベニウス順像はHN filtrationの最大・最小傾斜の差がShepherd-Barronにより与えられた上限値をとるという顕著な性質をもつ.この性質をもつ曲線上のベクトル束Eの構造,及び,不変量ν(E)について考察を行なった. 2次元正規特異点は,その局所環の極大イデアルの標準加群による唯一の非自明な拡大がZariski微分加群と同型であるとき擬斉次であるという予想がある.この証明を,特異点解消の例外因子が星型の双対グラフをもつという自然な仮定をつけ,グラフの枝に対応する例外曲線を巡回商特異点につぶした曲面X上の例外因子Eの定義イデアルの随伴次数環の層から,X上のEの形式的近傍の構造層への射を構成するという方針で試みたが,Xが巡回商特異点をもつ場合の障害が特定されなかった.
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