研究概要 |
正標数のQ-Gorenstein特異点のF-正則性は, 標数0の双有理代数幾何に現れる対数的端末特異点と標数pへの還元を通して対応することが知られている. Q-GorensteinでないF-正則特異点は容易に構成できる一方で, 従来の対数的端末特異点の定義では特異点のQ-Gorenstein性を仮定する必要があったが, De FernexとHaconはQ-Gorensteinでない特異点に対して対数的端末特異点の概念を拡張した. そこで, この一般化された対数的端末特異点とF-正則性の対応, すなわち次の予想について考察した. 予想. 標数0の特異点が, De Fernex-Haconの意味で対数的端末特異点であることは, その十分大きい標数pへの還元が強F-正則であることと同値である. この同値の必要性は比較的容易に示されるが, 十分性は非Q-Gorenstein特異点に対しては未解決である. この十分性が, 特異点の反標準環の有限生成性に関する幾分テクニカルな(しかし特異点のQ-Gorenstein性よりは明らかに弱い)仮定の下で成り立つことを証明した. 正標数のd次元正規特異点(Y, y)の特異点解消μ : X→Yに対し, Xの構造層のe次フロベニウス直像のμ-生成的部分A_eは一般に階数p^{de}の0_X-加群である. (Y, y)が2次元有理特異点の場合にはA_eは局所自由層となり, これがn個の大域切断で生成されるとすれば, 特異点解消XからY上のGrassmann多様体へのYスキームの射Φ : X→Grass_Y(p^{de}, n)がひきおこされる. この射Φを用いて, Φの像と安田健彦氏により定義されたF-爆発との関係について考察した.
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