研究概要 |
「構造系を持つ全行列多元環」の原型はタイル整環の剰余多元環であり、タイル整環のホモロジー代数的性質は剰余多元環に凝縮されている。その様な剰余多元環を研究する枠組みとして、構造系を持つ全行列環の研究は始まった。今年度は、以下の研究成果を得た。 離散付値環上のn×nタイル整環で大局次元有限なものは、nを固定すると有限個である。しかしその有限個の様相を決定することは難しい。三角タイル整環の場合に限定すればnに関する帰納法で決定できる(Jategaonkar,Proc.AMS(1973))ことが知られていた。一般の場合もnに関する帰納法で決定できるとすれば「大局次元有限なタイル整環はneat原始ベキ等元を持つ」という予想(Fujita,J.Algebra(2002))が尤もらしかった。しかし、この予想に反例が見つかった。即ち、任意の素数pに対してn=4p+5のタイル整環で離散付値環の剰余体の標数がpでなければ大局次元が有限でneat原始ベキ等元を持たないものが構成できた。標数がpの場合は大局次元は無限大になる。計算は、タイル整環に付随する無限半順序集合の有限次元表現圏を介するRump(Comm.Algebra,1996)の方法を修正して行った。この例により今後構造系を持つ全行列多元環の研究には、基礎体の標数との関係が意味を持ってくる。
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